基礎知識

PowerLab

PowerLabとは

PowerLab®(パワーラブ)は、生体信号をはじめとする様々な現象を記録するための装置で、世界中の研究・教育機関で広く利用されている(PowerLab®はADInstruments社の登録商標である。以降、商標表示は省略する)。PowerLab システムは、@ 現象を捉えてアナログ信号に変換する「センサ、記録電極」、A アナログ信号を増幅する「アンプ」、B アナログ信号をデジタル信号に変換する「PowerLab本体」、C デジタル信号を記録・表示・解析するための「パソコン」から成る。また、生体現象を引き起こす刺激(とくに電気刺激)も PowerLab から作り出せる(D「刺激装置」)。

PowerLabで記録できる現象は多岐にわたり、本学の「生理学実習」に限っても、心電図、肺活量、筋電図、活動電位、筋収縮などに利用する。この多様性は、センサやアンプの変更によって実現される。実習項目ごとに異なる、多彩なセンサ、アンプに面食らうかも知れないが、各機器の役割(上記、@〜Dとの対応)を把握すれば、理解は難しくないだろう。

@ センサ、記録電極

センサは生体現象(物理現象;筋収縮や呼吸気量など、化学現象;酸素分圧やpHなど)を電気信号(アナログ信号)に変換する。記録電極は、生体が生じる微弱な電位(心電位、筋電位、脳電位など)を導出する。生理学実習では、以下のようなセンサおよび記録電極を使用する。

画 像名 称主な用途
クリップ電極心電図
フロー・センサ呼吸機能(肺活量、1秒率)
表面電極筋電図、脳電図
張力トランスデューサ筋収縮力
神経チャンバ活動電位
:実習Tで用いた機器(Uでは使わない)

A アンプ

アンプは、センサや記録電極が捉えた(または変換した)電気信号を増幅し、また、必要に応じてノイズを除く。生理学実習では、以下のようなアンプを使用する。

画 像名 称主な用途
生体アンプ
(バイオ・アンプ)
心電図、筋電図、活動電位
スパイロメトリ・
ポッド
呼吸機能(肺活量、1秒率)
(ひずみ)アンプ
(ブリッジ・アンプ)
筋収縮力
:実習Tで用いた機器(Uでは使わない)

B PowerLab本体

PowerLab本体は、アンプから送られてきたアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)してパソコンに送る。実習で使う PowerLab には、外観やサイズが異なるものがあるが、機能は同一である(これらはチャンネル数が異なる。チャンネル数が多ければ、複数の現象(例えば、拮抗する2筋の筋電図)が同時に記録できる)。


C パソコン

PowerLabで変換された信号は、専用ソフトを介してハードディスク上に記録される。本実習で用いる専用ソフトには「Chart®(チャート)」と「Scope®(スコープ)」の2種類があり、用途に応じて使い分ける(Chart®およびScope®はADInstruments社の登録商標である。以降、商標表示は省略する)。いずれのソフトでも、現象の経時的な変化がグラフ表示される…すなわち、横軸は時間を、縦軸は対象の変量(例えば、肺活量なら mL、心電図なら mV、など)を示す。いずれのソフトでも、横軸と縦軸のスケールを操作できるので、容易に「概要の把握」や「詳細な検討」ができる。

Chart
「データ・ロガー」装置に相当するソフトで、1秒〜数時間以上の現象を扱うのに向いている。多チャンネルの同時的記録が可能である。生理学実習では、多くのケースで Chart を使う。
Scope
「オシロスコープ」装置に相当するソフトで、数秒未満の現象を扱うのに向いている。「トリガ信号」をサポートし、記録の開始時点を μ秒(1/10-6)単位で制御できる。2チャンネルの同時的記録ができる。「活動電位」の実習では Scope を使う。
操作の詳細は、各実習項目の「方法」を参照する

D(電気)刺激装置

生体からの応答を引き出す目的で刺激を加える場合、「電気刺激(定電流刺激)」がよく使われる。電気の他にも接触、光、音、温度、化学物質などが「刺激」となりうるが、電気刺激には、以下に示すような利点がある:1) 刺激内容(時間、強度)の規定が容易で、再現しやすい、2) 通常は応答が即座に起きる、3) 刺激後の原状回復が早い、など。生理学実習Uでは、PowerLabシステムの「電気刺激装置」を用いて生体標本に電気刺激を与える。刺激電流の特性(刺激強度、刺激持続時間、刺激回数および頻度など)は、専用ソフト(ChartもしくはScope)から制御できる。

(右図は刺激電極の先端)